第3章 座位分娩
4.生まれたての赤ちゃんを抱っこするママ
産まれたての赤ちゃんは、実は、青ちゃんであることに皆さんは気づかれるでしょう。
最初の呼吸、最初の鳴き声も、みなさんが思っているほど産まれてすぐではないこともあります。これは、お母さんの子宮の中は高い山に登ったときと同じく、酸素量がすくないことに起因します。赤ちゃんには大丈夫な仕組みになっていますが、少ない酸素で生活していたので、産まれたときは色が青いのです。
また、しばらく泣かなくても大人のように酸欠で問題を生じることはありません。
胎盤から送られてくる血液はまもなく途絶えます。胎盤を切った後は口の中、鼻腔の中の羊水などを吸って、当院ではタオルにくるんでお母さんに抱っこしてもらっています。
裸のままお母さんの胸に抱っこさせ、カンガルーケアと称しているようですが、要は、良い母児関係確立には早期に母親と皮膚の接触をさせることが大切です。
未熟児とか、呼吸障害があり、母児がせっしょくしないまま過ごすと、後の発達に栄養すると言われていますので、座位分娩のように母児の接触が容易な体位は優れていると言えます。
何万頭という子どもが、狭いところで一度に産まれるアザラシの集団でも、母子は決して間違えることはありません。
それは、産まれるときの親子の接触で親子が認識するからだと報告されています。
お母さんが抱っこするとそれまで泣いていた赤ちゃんは不思議と泣きやみます。
お母さんの心臓の音を聞いて安心するのでしょう。
第3章 座位分娩
3.分娩第二期の過ごし方
子宮口が全開に近くなってまいりますと、痛みもどんどん強くなります(極期)あるき回るのは困難になってきますので、産婦さんはベッド上で過ごすようになります。
この時、ベッドの背もたれを45度くらいに起こすと、背骨の入口面は水平になりますので、入口面に直角に進んできた胎児の頭は、重力を利用して下降しやすくなります。それに合わせて、胎盤は下に行くほど縦に長くなりますので、地頭は下降しながら海戦し、丁度顔をお母さんの背中側をなめるようにアゴを上げていきます。(第三回旋)
多くの場合、葉水を包んだ袋が破れて葉水が出てきます。(破水)
子宮口が全開すると、イキミが自然に加わり、いよいよ分娩第二期(娩出期)に進んできます。
分娩第二期は、2時間以内に終了するのが正常とされています。産婦さんは、イキミに合わせて腹圧を掛けるようにします。児頭が見え隠れするようになり(排臨)、会陰から外に大部分が出てくるようになると(撥露)、膣や膣の周囲の筋肉は急速に柔らかくなり児頭の通過を助けます。初めてのお産では、多くの場合、会陰切開を加えますが、これは後の縫合を容易にし、創をきれいにします。
産婦さんは、短息呼吸で力を抜き、傷が大きくならないようにします。
児頭に引き続き、肩も回りながら下がってきます。方は横に大きいので、膣を出るときは、背中が横向きになります。その時は、頭も横向きになります。(第四回旋)体全体が出てきますと、鼻腔内と口腔内の葉水を吸引します。狭い骨盤を通過した赤ちゃんは、一気に大きな声で泣き始め、うれしい赤ちゃんの誕生です。臍帯を切り暖かいタオルでくるんでお母さんにダッコしてもらいます。
産まれるまでのこの時期、産婦さんの過ごし方のコツの第一は、赤ちゃんに酸素を多く送るための上手な呼吸と言えるでしょう。
第二には、陣痛に合わせての上手なイキミです。
第三には、赤ちゃんの頭が出てくる瞬間に、できるだけ力を抜くことなど、ほとんど呼吸を上手にすれば良いということになります。