第1章 ヒトのお産:5.ヒトのお産は難しい
私たち人間に一番近い霊長類で、お産を比較してみます。
ヒトの赤ちゃんは、その他の霊長類とは比べられないほど骨盤の入口の大きさに比べ頭が大きいことがわかります。骨盤と赤ちゃんの頭の関係は、動物の種類で違うのですが、イヌなど霊長類以外の四足歩行動物では、もっと頭が小さくなります。赤ちゃんの頭が大きければお産が難しいことは容易に想像できますね。
実際人間の場合、初めて赤ちゃんを生むときは、陣痛が開始して産まれるまで、平均して14時間もかかるのです。
そういう意味では、どんなに安産の方でも、ヒトのお産はなかなか難しいと言えます。
また、ヒトは骨盤の形を比較しても、お産に適した形をしておりません。
2本足で立つヒトの場合、支えられているものが脊柱から離れるだけ脊柱への負担が大きくなります。
そこで、内蔵が脊柱にかかる負担を軽くしようとして、内臓は体の中心にある骨盤に集まってまいります。
そのために、上半身の体重と内臓のすべての重さが骨盤にかかるので、それを回避するために、ヒトの骨盤は横に広く、また、浅くなりました。
また、骨盤誘導線は後方に曲がって、重力のかかり方を減少させています。
大きな頭を出すためには、骨盤の出口は広い方が有利です。
しかし、それでは上半身と内蔵の重みを支えられないので、出口は狭く、前方に屈曲していることも、ヒトのお産が難しくなった原因の一つです。
また、骨盤の大きさに比べて赤ちゃんの頭が大きいこと、ヒトの子宮の入口が、大変固く出来ていることが、さらに、お産を難しくしています。
ヒトは、立っているときも、座っているときも、脊柱は直立していますので、子宮の入口は、ほとんど下方にあることになります。
そのため、赤ちゃんの重力は、直接子宮の入口にかかってしまいます。妊娠中に、赤ちゃんが落ちないように、ヒトの子宮の入口はとても硬くなくてはなりません。一方、陣痛が始まった時は、今度は、子宮の入口はやわらかくなって速やかに開大しなければお産が進行いたしません。ヒトでは、その子宮の入口が硬いので子宮口が結に開かないという難題が待ち構えているのです。
しかし、神様は、そんなヒトを可哀想に思われたのか、2〜3の工夫をしてくださいました。その一つが、赤ちゃんの頭蓋が変形して、お母さんの狭い骨盤の中を少しでも通過しやすくできる仕組みです。頭蓋を形成する頭頂骨、側頭骨は隙間が開いていて、お産のときはお互いの褒めが重なり合って、骨盤に合わせて変形することが出来っるのです。(骨重積)もっとも、頭蓋骨の形成が未熟ということは、体全タモヒトでは未熟なままお産をするということを意味いたします。イヌの赤ちゃんは、産まれると間もなく歩くことが出来ますが、ヒトでは、1年以上もかからないと歩くことが出来ません。
ヒトの赤ちゃんが、手をかけないと育たないのは、お産を少しでも軽くしなければならない仕組みが原因だということがわかります。
一方、イヌや牛の場合は、4本足で立っていますので、子宮の入口が横にあります。
イヌの赤ちゃんの重力は、下方に向い、子宮の入口を圧迫しません。したがって、子宮の入口は柔らかくても、早産などの心配がなく、お産のときは簡単に開いてお産が楽に終了します。さらに、骨盤の誘導線と子宮の長軸が平行になっているので、赤ちゃんの回旋は全く問題とならず、どんな回旋をしてもお産はスムーズに進行します
また、骨盤に比べて赤ちゃんの頭が大変小さいので、これもお産が楽な要因となっています。
また、敵が多いので、なかなか成獣にまで育ちません。そこで一度に多くの赤ちゃんを産むのです。一つ一つは小さくなりますが、子宮の中で頭も体も充分発育するのを待ってからお産を始めることが出来るのです。