5-5.歯科専門メーカーで造られたスペースメール

第5章 お産の周辺

5.歯科専門メーカーで造られたスペースメール

 私と妻は、二人で流した数ヶ月の汗と涙の血症である座位分娩台は、自分の医院で一人悦にいって使用しておりました。その当時は、メーカーが製造して全国で販売するようになるなど思いもつきませんでした。

 ところが、あるハプニングによって、私たちの座位分娩台は、京都の歯科用診療台製造メーカーである、モリタ製作所に持ち込まれました。

 日本では、数社の産婦人科医療機器メーカーが、分娩台を造っています。

 これは、実際私たちが分娩台を造ってわかったことですが、設計から製造まで一貫して書かわているのは、お産を全く知らない男の集団なのです。

 何十年も汚い分娩台を造ってきた人たちでは、新しい私たちの考えを理解してくれそうにありません。

 モリタ製作所を最初に見学したとき、案内された応接室の棚に、患者さんが横になり歯医者さんが、頭の上から治療している模型が置いてありました。

 私が子どものときかかっていた歯科医師さんのところでは、背もたれの直角な椅子に座り、歯科医師さんは前から治療をしていました。

 モリタ製作所が日本で初めて、現在日本で広く使われている患者さんが横になり治療を受ける歯科診療台を造ったと説明を受けました。その後、工場を見学させていただきましたが、職人さんが1分間に何十万回も回転するモーターについて、誇らしげに説明してくれました。こういう新しい発想を現実に出来る会社、自分の仕事に誇りを持っている職人さんがいる工場なら、私たちの座位分娩台も新しい想像で製造できると思いました。

 メーカーに製造を任せるにあたっては、自分たちの知的所有権を確保しておくことは大変大切です。妻と二人で造った分娩台で特許がとれるとは夢にも思わず、妻の誘いにしぶしぶと弁理士さんのところを訪れました。

 特許申請を弁理士さんが扱うことも知らなければ、特許の権利が何であるかの知識も全くありません。

 弁理士さんにお産の説明を一からお話し、どうしてこの分娩台が優れているかをりかいしてもらうのに、随分時間がかかりました。

 弁理士さんも大変興味を持って聞いてくださいました。発明から特許取得まで、日本では4年もかかりました。

 一方、アメリカに出した特許は、1年半で受理され、知的所有権に厳しい、さすがアメリカと感心したものです。

 東京の科学技術会館で座位分娩台スペースメールは、日本医学器機学会の平成3年技術賞を授与されました。

 

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