5-4.夫の立ち会い

第5章 お産の周辺

4.夫の立ち会い

 最近は、出産の時、夫が立ち会うことが多くなりました。

 当院でも約50%の方が夫の立ち会いのもと出産をされております。痛みを我慢し、ガンバッテいる妻の側でかいがいしく援助する夫の姿勢は、時には感動的でもあります。

 妻が妊娠したと知ったとき、夫は、「大変うれしい」から「困った」まで様々な反応をします。

 分娩室でお目にかかる夫は、大変積極的で、まるで自分がお産をするような雰囲気の人から、買い物をする妻に、イヤイヤ付き合う夫の姿そのものの人まで様々です。

夫立ち会いのメリット・デメリット

 ニューヨーク死コロンビア大学で、私を案内してくださった女医のドーシー先生は、分娩室から抜け出して廊下で休憩する夫の姿を指差して「かわいそうな人たち」といいました。「どうして?」と訪ねますと、「立ち会いを希望する妻の申し出を断ったら離婚されますからね」との答えでした。

 何事も行き過ぎますと困ったものです。「一生に一度のことだから」と日本人に限らず、祝いごとを身分不相応に派手にやりすぎることが多いようですが、こと出産・育児に関しては私は「そんなに力まないで、もっと自然体になりましょう」と言いたいですね。

 さて、分娩時の夫の役割はなんでしょうか。

①分娩の進行に伴い増強する痛みは、収縮する子宮の痛みだけではありません。むしろ腰の痛みを強く訴える人が多くいます。腰をさすってあげましょう。

②押し寄せてくる陣痛に合わせて、妻は懸命に呼吸法をしています。喉が渇いてきますので、お茶を飲ませてあげましょう。

③しっかり汗もかいています。タオルでやさしく拭いてあげましょう。

④痛みが押し寄せてくると不安はだんだん強くなってきます。もっと痛みが強くなってきました。「何で私だけこんな痛みをガマンしなければならないの!」と妻は怒りをあなたにぶつけて、言葉を荒らすかも知れません。「いつもの妻とは違うぞ、本当の妻の姿はこれだったのか」と誤解をしないでください。耐え難い痛みを、やさしいあなたにぶつけて気をまぎらしているのですから。

年に数人の夫は分娩で真っ青な顔になって、時には倒れてしまう人もいます。

 私どももよく気をつけてはいるのですが、一瞬のことで間に合わないこともあります。子宮の入口が全開、外陰部を消毒し清潔なシーツを敷いて、赤ちゃんの娩出に備えるころから出血が増えてまいりますと、出血になれていない男性は時に気分が悪くなるのです。

 きっと、夫の心は傷ついていると思います。そんなに力まないで。子宮口が全開してイキンでも良くなると、妻はそばにいてくれた夫のことなど気にしなくなります。

 それまで、力を入れたくても頸管裂傷を起こさないよう、力を入れないでガマンさせられて、つらい思いをしていた妻は、イキムことができるようになり、ホッとしているのです。

 よくガンバリマシタ。外に出て一息ついてください。間もなく元気な赤ちゃんの誕生ですよ。

 次は座位分娩の時の、夫の役割について少しお話いたしましょう。

 一番つらい分娩第一期のとき、夫は妻の様々な要求になるべく応えてあげてください。

 子宮口が全開する頃から背板を起こして座位にします。妻の目線は、夫の目線と同じ高さになりますので、夫は、分娩台の側方に立ち、良く目を見てあげてください。

 目が不安を訴えていれば、その解消に努めましょう。妻の体の一部に手を触れておきましょう。スキンシップが一番の妻の安心です。座位分娩は、このように夫が妻に援助をしやすい体位と言えます。

 

 

 

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