第5章 お産の周辺
2.分娩管理
お産の開始は「陣痛周期10分、すなわち陣痛頻度が1時間6回となることをもって、臨床的な陣痛開始時期とする」となっています。
「陣痛」という言葉は、何か恐ろしい響きがして使いたくないのですが、英語でも「痛み」と表現します。
陣痛は、自分の意思では調節できない「定期的な子宮の収縮」のことで、収縮の始まりから次の子宮収縮の始まりまでを「陣痛周期」と言います。
どのような順序で、子宮が定期的に収縮してお産が始まるのか、研究が色々されていますが、いまだはっきりとは解明されていません。
陣痛は赤ちゃんを子宮外、骨盤外に出す「娩出力」となります。
子宮の収縮は、自然と必要に応じて娩出力が増してくるので、お腹に力を入れる「腹圧」はなくとも、赤ちゃんを産むことは可能です。
私どもの病院でも「いきまないお産」のこころみがなされています。
子宮の中の圧力は、分娩の各期により平均圧が異なってきますが、400~450mmHg
です。
子宮収縮が始まって治まるまでは、平均約50秒であり1分を越すことはありません。
1分30秒から2分以上、子宮の収縮が続くものを過強陣痛といいます。
陣痛の間欠時間が短く、持続時間が延長する過強陣痛の時は、子宮の内圧が上がって、ついには血液循環が阻害され、赤ちゃんが低酸素状態に陥ることになります。
一般的には子宮の入口が柔らかくなり、お産の準備が出来てから、陣痛が開始するようになってくる例が多いのです。
それでも、平均で3kgの赤ちゃんを支えていた子宮の入口は大変硬く、この陣痛(娩出力)によって、子宮の入口は、本当に徐々に開いてくることになります。
陣痛誘発剤と呼ばれる薬剤を、点滴などで注入すると陣痛は強くなってきます。この力を借りてお産をすると進行は速くなりますが、必要以上に、陣痛を強くすることは、子宮破裂、頸管裂傷の原因ともなりますので、慎重にしなければなりません。
お産の進行を観察しておりますと、心拍数が低下して赤ちゃんが「苦しい、助けて」という状態になることがあります。そうすると不思議なことに直後の陣発発雷は遅れてきます。
このように、赤ちゃんがくれる情報はとても大切で、これを無視してはいけないと私は思っています。
急に陣痛が弱くなったからといって、すぐに強化する方法は厳に慎まなければなりません。妊娠の途中で赤ちゃんが早産しないように硬かった子宮の入り口は、開くのには当然時間がかかります。
一方」、子宮の入り口が柔らかくて、途中で何度も出そうになった子宮は開くのに時間がかかりません。
このように、お産の進行に個人差があり、内圧の上昇というあまり良くない環境に置かれ、刻々と変わる赤ちゃんの元気さを知ることは大変重要なことです。現在は、お腹の上に置いた器械で子宮の収縮と胎児の心拍動を計測する方法が、唯一リアルタイムに胎児の状態を知る方法として使用されています。
胎児心拍のパターンは色々研究され分類されています。
場合によっては、速やかに帝王切開をしなければならないこともあります。
また、赤ちゃんの頭皮に直接電極をつけて測定する方法が、最も正確にで~^たを収集できるのですが、早期に破水させる必要があるので私どもは採用していません。
外側法と呼ばれるお腹に2種類の装置をつける方は、産婦さんの行動に制限を与えるので大変苦痛だと思いますが、現在では仕方が無いと思います。
少しでも早い時期に機器が改善されて、産婦さんの負担にならないような工夫が望まれます。