(参考)分娩体位の変遷 2

(参考)分娩体位の変遷

2.分娩体位の具体的な変遷

 18世紀中期までの分娩体位は、分娩各期において世界的に「体幹立位」であった。

 分娩時体位は、文化的に様式化された行動や習慣により決定されてきたが、その具体的な体位は、次の通り大別されている。

 なお、体位の分類には諸説あるが、以下を引用した。

(1)体幹から

ア 体幹立位

 ①立位(standing position)

 ②座位(sitting position)

 ③膝位(kneeling position)

イ 水平位

 ①側臥位(lateral position)

 ②膝肘位(knee-elbow position)

 ③腹臥位(prone position)

 ④仰臥位(dorsal position)

(2)体幹と下肢の関係から

 ①背腎位(dorsal recumbent position)

 ②砕石位(lithotomy position)

 ③蹲踞位(squatting position)

(3)世界各国の状況

 世界で最も古い分娩体位に関する彫像は、紀元前5,6千年の新石器時代のもので、トルコで発掘された座り分娩を行っている女神像である。

 原始時代の分娩は、自然分娩であり女性の排便・排尿の姿勢から「蹲踞位」あるいは「かがみ込んだ姿勢」が多いと推察されている。

 ①エジプト=原始的なレンガ作りの椅子に腰掛けるか、ひざまずいた立位により出産している。

 ②ギリシャ・ローマ=立膝位での分娩が繰り返された。

 ③中世初期のヨーロッパ=座位分娩が一般的であった。古代エジプトの分娩椅子は、可動性分娩台(ひざ上分娩)が改良されるなど今日の分娩台兼ベッドの原形となっている。また、優美に装飾された分娩椅子も出現している。

 ④このように古代から18世紀中頃までは、世界的に自然分娩の形態をとり、体幹直立分娩がその主流であった。

 ⑤フランス=1738年産科医 Fransoin Mauriceau は、 Chamberlen の鉗子、産科処置を容易にするため分娩椅子より臥位が適していることを提唱。この体位はヨーロッパ各地に広がった。

 ⑥アメリカ=1800年代初期の頃 W.P.Dewees、により仰臥位が導入された。依頼、西洋諸国の大部分において仰臥位または 側臥位が広く用いられるようになった。また、Dewees(1824)は、仰臥位で膝を引き上げた状態が分娩経過に良い結果を得られうと主張し、砕石位(lithotomy position)が分娩台の登場とともに主流となった。

 ⑦イギリス=19世紀には、吸入麻酔剤としてエーテルが使用され始め、麻酔下における分娩管理に便利な点から側臥位が採用された。

 

 以上のように、20世紀初期までは、ベッド形式により過程分娩が主流であったが、施設分娩の普及とともに臥位分娩が一般的となった。

 一方、未開発国での分娩体位は、原始的な形態をとり、アフリカでは体幹立位、ブラジル、ペル-、エクアドル、メキシコなどでも人種にかかわらず立位分娩が採用されていた。

(4)日本における状況

 わが国において、古来座産が多く行われていた。

 座産は、床の上にわらを敷き中腰になり、力綱の結び玉につかまった状態で分娩していた。それは、横になると乳不足になるとの俗信があり、横臥することは禁じられ、枕に肘をもたせた幾日もわらの上に座ってその姿勢をくずさなかったと言われている。

 欧米式産科学の導入は、分娩体位を一定の方向に普及させ、分娩介助に便利な仰臥位膝開排位を標準とした分娩台の開発となった。

 吾妻式分娩台(1907)が最初で、その後、大正中期にかけて中山式、慶大式、セイロカ式などを経て、昭和初期には日赤型、終戦後には篠原式の各分娩台が登場した。

仰臥位の不自然さと非科学性は、自然な体位への回帰提唱となりほぼ垂直位置に持ち上げることができる背もたれが付いた体幹立位座位分娩台の出現となった。

 しかし、一般に注目されず復旧しなかった。次に生理学的な面から研究された結果から生まれた座位砕石位分娩椅子も、背もたれが固定式であったために普及にいたらなかった。

 現在、世界的に従来の膝受け部あるいは踵受けを装着し、背もたれを起こし座位トスrことが出来る仰臥位分娩が広く使用されている。

 

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